
大腸がんは、早期に発見すれば完全に治すことが容易い病気です。
しかし、早期のうちは自覚症状もないために、自覚症状が出たときには既に遅く大分進行している可能性があるのです。
だからこそ、症状が何も出ていなくても、1年に1度は大腸がん検診を受けて、早い段階で大腸がんを発見し、適切な治療を行うことが必要です。
早期発見、早期治療をすることにより、自分自身にメリットがあるだけでなく、地域社会における労働生産性の確保、国の医療費削減に繋がります。
日本は、先進国でありながら、がん検診の受診率が他の国に比べても低いとされています。
日本の大腸がん検診の40歳〜60歳の男性の受診率は41%で女性が34%と低い受診率となっています。

大腸がん検診により、早期発見できれば、下記に示すようなメリットがあります。
・手術が簡単に済みます。
・治療に要する時間が大幅に削減できる。
・治療後の日常生活への影響が少ない。
・家族への負担が少ない。
上記の他に、受診して全く大腸がんの疑いがなければ、日常生活も安心して暮らせることに。
大腸がん検診を受けるには、市町村や企業が行っている集団検診と人間ドックのような個人検診があります。
各市町村で行っている大腸がん検診の自己負担額は、一般的に1,000円以下です。
大腸がん検診では、便潜血検査を行いますが、陽性と判定された場合には、精密検査を受けます。
陰性と判定された場合には、精密検査は行わず、翌年にまた大腸がん検査を受けます。

●便潜血検査とは?
便の中に血が混じっていないかどうか2日分の便を検査しますが、便潜血が見つかるのは約7%で、100人中7人くらいです。
便が大腸のがんが出来ている部分を通過すると、便とがん組織が擦れて血液が出てそれが便に付着します。
便に混じったほんの僅かな血液を検査しますが、大腸がんでない人はもちろん便に潜血が付着しません。
便の上をまんべんなく擦り、検査棒に付着させます。
食事制限もなにもない簡単な検査で、自宅で行うことが出来、それを検査機関等に提出します。
40歳を過ぎたら、年に1度は大腸がん検査を受けることを、厚生労働大臣が勧めています。
ただし、この検査の結果が必ずしも正しいとは限りません。
大腸がんでもないのに、陽性反応が出たり、大腸がんに罹っているのに陰性だったりもします。
今年検査結果が陰性だったから、来年もずーっと陰性とは限りませんので、毎年年に1度は検査をすることをお勧めします。
大腸がん検査を受ければ、死亡率が下がることが分かっているのに、検査を受けない人がまだ沢山おられます。
「どこも悪くないから自分には関係ない」と考えるのではなくて、「今はどこも悪くはないが、ひょっとしてがんが潜んでいるかも知れない」と考え受診することをお勧めします。
家族の中にもし大腸がん検査を受けたことがない人がいれば、是非検査を受けるように説得してみましょう。
便潜血検査でもし陽性が出たら大腸がんの可能性が極めて高いので、放置せずに精密検査を受けましょう。

●精密検査とは?
精密検査としては、「大腸内視鏡検査」が上げられます。
内視鏡検査では、大腸がんだけでなく、良性のポリープや炎症性腸疾患の診断も可能です。
内視鏡とは、先端に小型のカメラとライトが付いた細長い管のような形をした手術器具です。
肛門から入れた内視鏡は、大腸の内部をモニターに映し出し、もし小さい腫瘍があれば切り取ることもできる手術用治療器具でもあります。
内視鏡の治療は、身体に対する負担が非常に軽く、入院などせずとも腫瘍を切り取ることができる利点があります。
内視鏡治療は、がん細胞が腸壁の最も内側にある粘膜に留まっている場合(ステージ0)と、粘膜下層まで入り込んでいても(ステージ1)、浅い所なら取り取ることが出来ます。
大腸の粘膜には、神経がないため、痛みを感じることがありません。
内視鏡検査は何だか大変そうだと思われる方がおられるようですが、そんなことはありません。
内視鏡検査で1番大変なのは、前日もしくは朝から下剤をキチンの飲むことなのですが、粉薬を2リットルの水に溶かして2時間かけて全部飲まなければならないと言うことです。
そして、腸の中の便やその他食べたもののカスなどを綺麗に洗い流さなければいけません。
完全に身体から便やその他のものが出たら、内視鏡検査に入ります。